悲劇の短剣盗難事件

悲劇の短剣盗難事件 弐

さながら捕食し合う動物のような。それをショーと呼ぶにはあまりに緊迫し過ぎていて、殺し合いと呼ぶにはあまりに愉快だった。煌びやかな壇上で向き合う人間が二人。取り巻きのようにザワザワとそれを囲む男女と、呆然とそれを見ている観衆。木野宮もまた、…

悲劇の短剣盗難事件 壱

とある金曜日の話。男は本を読みながら脚を組み、少女は嬉しそうに彼の元へ駆け寄った。「みーやまくん!みやまくん!ふふふん、明日は暇?」「暇だけど」また何処かに連れて行けと言われるのだろう。宮山 紅葉は予想して溜息を吐きながら、木野宮 きのみの…

悲劇の短剣盗難事件 プロローグ

この世には厄介なものが沢山ある。呪いだとか魔法だとか、そう言われるものには全て理由があるものだけれど。理由を知らないから人はそれを呪いだ魔法だと騒ぎ立てる。理由を知らないから人はそれを恐れ、慄き、ねじ伏せようとする。常盤 社(ひたち やしろ)…