新章

新章 最終話

そこに乗せたのは怒りではなかった。ただ純粋に勝ちたいという気持ち。明乃の鋭い眼光がそのまま突き刺さったかのようだった。立ち上がった明乃の一撃に、怯んでいた常盤が吹き飛ぶ。衝撃で天井がまた少し崩れ、爆音となって辺りに轟いた。猫猫事件帖 新章最…

新章 参

「なーんで人間ってのは学習しねえのかなあ。いつの時代もこういうでけえ現場は通気口が怪しいって相場が決まってるもんだろお?」「えへへ、私こういうの好きだなあ。なんかスパイごっこみたいで楽しいもん!」「そうかあ、そりゃあ良かったよ」適当に返事…

新章 弐

緊張している。物事を前にしてそう思うのは久しぶりだった。いや、初めてかもしれない。今まで随分と適当に過ごしてきたものだから、宮山 紅葉は緊張という言葉とそれなりに遠い生活を送っていた。だから緊張している、という事実を飲み込もうとするほど、余…

新章 壱

暗がりに紛れて、少女は常に憂いていた。憂うべきは先の見えない未来でも、どうしようもなく縋り付いてくる過去でもない。それはただ、退屈という二文字に満たされただけのこの現状だ。常に、常に黒堂 彰は嘆いていた。欲しいものは手に入る。いつだって手の…