幕間

とある回想の放課後 壱

宮山紅葉(みややま こうよう)。彼の物語は随分と中途半端に、秋から始まった。就職活動を怠っていたとは言わないで欲しい、彼には彼なりの目標とやるべきことがある。間違ってもニートなんて呼び方はしないで欲しい。彼は彼なりに自称ではあるが職業がある。…

とある回想の平日 壱

いつからこんな風になったんだっけ。水守 綾は部屋の中でひとり、答えの出ない質問に頭を痛めていた。学生の頃の友人たちと遊ばなくなって久しい。たまにニュースを見てメールが来るが、詳しいことを話すわけにもいかず、結局食事に行ってもはぐらかすのに精…

とある回想の夜 弐

ずっと引っかかっていた。毎日毎晩、眠る前にあの子供の姿が目に浮かぶ。背が高い方とは言え、あどけない顔が呆然とこちらを見つめている目が、突き刺してくるかのような痛みとなって頭の中に現れる。東雲 宵一は、釈然としないまま今日を迎えた。怪盗として…

とある回想の夜 壱

祈りに似ていた。ただそれは、祈りにしてはあまりに幼く、あまりに切実で、あまりに純粋すぎるものだった。東雲 宵一は、今もまだその祈りの意味を飲み込めず、消すこともできず、捨てることもできずにいる。祈りに似ていた。少女とも少年とも付かぬその子供…

水曜日の夏林檎事件

PM 21:00これはほんの幕間、とある水曜日のお話。夜を追う怪盗達と、怪盗を追う探偵達は、今日もまた都会を闊歩する猫のように街並みを見送る。日が沈み、また昇る。繰り返しよくある風景を今日も見届けて、彰は小さくくしゃみをした。なんだか鼻がむず痒い…